代数閉体上の楕円曲線上の自己同型群について_メモ

ハーツホーンp.321の内容についての計算メモ.

$ k$を標数が$ 2$または$ 3$ではない代数閉体とする.

この体の上の楕円曲線について,適当な線形変換を行うことにより,

$$ y^2=x(x-1)(x-\lambda)$$

(ただし,$ \lambda\in k$)の形に書くことができる.このとき,この楕円曲線を次数が$ 2$の射$ f\colon X\rightarrow \mathbb{P}^1$だと思うことにする.ここで,$ G$を$ X$上のある点$ P_0$を固定するような$ X $の自己同型群とする.$\sigma \in G $について,$ f\circ \sigma=f$であって,$ \sigma$が$ X$上の恒等写像でないなら,$ \sigma$は位数$ 2$の元を定める.

これを具体的に計算により示した.(計算内容は高校レベルだけれど,忘れたら思い出せそうにないので今書いておく.)

任意の$ x\in X$について,

$$ f(x)^2=x(x-1)(x-\lambda),\ \ f(\sigma(x))^2=\sigma(x)(\sigma(x)-1)(\sigma(x)-\lambda)$$

であり,$ f\circ \sigma=f$より,

$$ x^3-(\lambda+1)x^2+\lambda x=\sigma(x)^3-(\lambda+1)\sigma(x)^2+\lambda \sigma(x)$$

が成り立つ.これを$ \sigma(x)$に関する$ 3$次方程式だと見ると,明らかに$ x$は解であるが,$ \sigma$は恒等写像ではないとしていたので,$ \sigma(x)\neq x$としても良い.このとき,上の等式を整理して,$ (\sigma(x)-x)$で割ることにより,$ \sigma(x)$についての$ 2$次方程式

$$ \sigma(x)^2+(x-\lambda-1)\sigma(x)+(x-\lambda)(x-1)=0\ \cdots(1)$$

を得る.この$2$つの解を$ \alpha ,\beta$と書く.$ \sigma$の位数が$ 2$であることを確認するため,この$ 2$つの解にさらに$ \sigma$を作用することを考える.まず,解と係数の関係から$ \alpha+\beta=(x-\lambda)(x-1),\ \alpha\beta=-(x-\lambda-1)$が成り立つ.得られた解にさらに$ \sigma$を作用させると,$ \sigma^2(x)$についての$ 2$次方程式

$$ \sigma^2(x)^2-(\sigma(x)-\lambda-1)\sigma^2(x)+(x-\lambda)(x-1)=0$$

を得ることとなる.これを解いて得られる$ 2$つの解を$ \alpha',\beta'$と書くことにすると,解と係数の関係より,$ \alpha'+\beta'=(\sigma(x)-\lambda)(\sigma(x)-1),\ \alpha'\beta'=-(\sigma(x)-\lambda-1)$が得られる.これは,式$ (4)$を$ x$についての$ 2$次方程式と見たときに解が満たすべき条件である.よって,$\sigma^2=1$.

ユークリッド環

ユークリッド

本稿ではユークリッド環について考察する.

 

ユークリッド環の雰囲気をつかむことから始めよう.

 

例1.

$ 8$は$ 3$で割ると$ 2$だけ余る:

$$ 8=3\cdot 2+2\rlap{.}$$

このことは一般の整数に言えて,ユークリッドの互除法が使えることの根拠になっている.

これは非常に簡単な例だが,次の例も見ておこう.

 

例2.

$ x^3+2x^2+3x-5$は$ x^2+1$で割ると,$ 2x-7$だけ余る:

$$ x^3+2x^2+3x-5=(x^2+1)(x+2)+2x-7\rlap{.}$$

つまり,整式(整数係数の多項式)は整数の場合と同じように割り算が行える.つまり,ユークリッドの互除法が使える.

 

このように,ユークリッドの互除法が成り立つような環のことをユークリッド環という.厳密な定義は後で与える.

ユークリッド環にならないような例についても考えてみよう.

 

例3.

二変数の整式がなす環はユークリッド環ではない.

例えば,$ x^2+2y^2-4xy+5x-8y+1$を$ x+y$で割ることなどを考えると,どのように商を選んでも,2次以下の項を消すことができない.

 

このような環と,ユークリッド環になる違いは何だろう.考えてみて欲しい.

答えは,適当な”余りを評価する指標$ \phi$”の存在である.

例えば例1では余りの大きさがそのまま$ \phi$として取れるし,例2の場合は整式の次数が$ \phi$となる.ところが例3ではこの次数によっては余りを正当に評価できない(実際にこのような$ \phi$が存在しないことは後で示すが,直接的には難しい).

 

もう一つ,例を観察しよう.

上の二つの例は高校の数学で学ぶような例ではあるが,$ \phi$を見つけさえすれば,もう少し変わったユークリッド環を見つけることができる.

 

例4.整数の実部と虚部をもつ複素数

$ 6+5i$を$ 2+3i$で割ったあまりを考えよう.複素数には(平面と同一視することにより)距離が定まるから,実部と虚部が整数であるもののうち,$ 2+3i$と$ q$の積が最も$ 6+5i$に近くなるように商$ q$を選べばよい.計算の実用的な方法については以下に示すが,今は$ q=2-i$とすることで,

$$ 6+5i=(2-i)(2+3i)+(1+0i)$$

とすることができる.

 

挑戦:

上の計算をせよ.整数の場合の類似で考えるとやりやすいかもしれない.

 

このように,ユークリッド環と呼ばれる環は,割り算の表示が行える環のことである.また,その環の構成には"余りを評価する指標"を決定すればよいということが分かった.

次に,これらのことを整理しながら,厳密な定義を与えよう.

微分1

 


本講では微分を定義する.

 

微分の定義

区間I=(a,b)微分可能な関数に対して極限

\displaystyle\lim_{h\rightarrow 0,h\neq 0}\frac{f(t+h)-f(t)}{h}=c

が存在するときc微分係数といい,f^\prime(t)で表す.

例として,f(x)=x^nのとき,

\displaystyle\lim_{h\rightarrow 0,h\neq 0}\frac{(x+h)^n-x^n)}{h}=\lim_{h\rightarrow,h\neq 0}(nx^{n-1}h+(n-1)x^{n-2}h^2+\cdots )/h=nx^{n-1}

 

微分は関数のふるまいを記述するのに有効である.

例えば,f(x)=x^3-xを考えよう.

このとき,f^\prime(x)=3x^2-1である.

実際,[tex:\displaystyle \lim_{h\rightarrow 0,h\neq 0}\frac{*1-(x^3-x)}{h}=\lim_{h\rightarrow 0,h\neq 0}\frac{(3x^2 h+3x h^2+h^3+h)}{h}=3x^2-1]

である.

事実として,この式をよく見て分かるように,

(f(x)+g(x))^\prime =f ^\prime(x)+g^\prime (x)

である.このことは,微分することと関数を足すこと(加法という)はどちらから先に行ってもよいことを意味している.このような性質を微分と加法が可換であるといい表し,代数の言葉で微分は加法に関する準同型であるという.

さて,微分された式を見ると,3x^2-1=0の解は\pm \frac{1}{\sqrt{3}}である.実は,関数fはここで極大値,あるいは極小値を持つことが分かる.

ただし,ここでは極大値,極小値とはその関数の値が最大となるような近傍をもつような点での値である(読者の直感に頼り厳密な定義は与えない).

これはなぜかというと,例えば-1/ \sqrt{3}\lt x\lt 1 / \sqrt{3}のところでは,常に3x^2-1が負になり,微分の定義の記号でhを正として

f(x+h)-f(x)\lt 0

が成り立つからf(x+h)\lt f(x)である.

同様にしてx\gt 1/\sqrt{3}f(x+h)\gt f(x)であり,-1/\sqrt{3}\lt xの範囲ではf(1/\sqrt{3})が最大になることが分かる.

このように,微分とは増減を表す量であるといえる.

 

 

*1:x+h)^3-(x+h

2500年前から

僕が覚えているのは学校から帰った後のことだ.その日学校で何があったかは全く覚えていない.おそらく,部活がなくてそのまま一人で帰宅していたのだろうと思う.その帰り道で彼と会った.

その日は夕焼けのきれいな日だった.雲は一つもなく,空だけがオレンジ一色に染まっていた.

彼は歩道のそばの段差に腰を掛け,近くにあるマンホールをじっと睨みつけながらぶつぶつと何かをつぶやいていた.明らかにサイズの大きすぎる白い洋服を着て,サイズの大きすぎる白いスカートをはき,裾はぼろぼろに擦り切れていた.もしかしたら男性がスカートをはいているのは違和感を感じるべきなのかもしれない.しかし僕はむしろ彼の立派な白いひげに目を奪われた.顎からまっすぐ伸びたひげはきれいですらあった.正直いって僕は臆病な方だ.言いしれない恐怖のようなものを感じて,僕はそっとそばを通り過ぎようとした.

「君はこのマンホールを見てどう思う.」

それが彼が僕に話した最初の言葉だった.その格好に似合わないような低く,しっかりとした声だった.僕は最初質問の意味が分からず,なにより急に自分に話しかけられたことにどぎまぎしていたので何も言わずにいた.

「君はこのマンホールを見てどう思う.」

彼はもう一度聞いた.

「模様がきれいだと思います.」

僕は答えた.実際そのマンホールはその中心から放射状にのびた線が独特ですこしかっこよかった.

「どんなふうにだ」

彼はもう一度尋ねた.

「その,なんというか,光線が出てるみたいで.」

彼はふっと微笑んだ.

「君は私の弟子になりなさい.」

彼は言った.全く訳が分からなかった.反射的に僕の頭の中で,学校で見た「知らない人に~ついていかない~」というメロディーが流れた.

「ごめんなさい.帰ります.」

僕はそのときにはこの老人に親しみさえ感じ始めていたが,このまま話していたら本当にどこかに連れていかれそうだったので,とりあえず話を終わらせようとした.

「私はすぐそこに住んでいる.私の話をきいてくれたらお金をあげるから私の弟子としてそこへ来なさい.」

彼は言った.ますます怪しかった.僕はもう一度怖くなって,彼の言葉を無視して家に向かって歩き出した.すると,ついてくるではないか.僕はもっと怖くなって走り出した.すると彼も走り,僕のうでをがっしりとつかんだ.